何か一つだけをやれば良いってもんじゃない

ウエイトリフティング種目は他のトレーニング種目と比べて跳躍力やスプリントに好影響を与えるイメージがあります。実際、ジャンプ高においては通常のレジスタンストレーニングよりも効果があるとしたメタアナリシスがあります。※1

通常ウエイトリフティング種目は、他のトレーニング種目(スクワットやデッドリフトなど)と並行して行うことが多いのですが一つ疑問が浮かびました。

ウエイトリフティング種目だけを行ったらどうなるんだろう?

調べてみるとこのような研究論文がありました。


研究目的:垂直跳びとスプリントにおける下肢のパワー発揮を向上させるトレーニング戦略(=トレーニングプログラム)の検証。

対象者:30歳以下のバレーボール選手、高校バレー、バドミントン、ホッケー選手

総被験者数52名(うち13名が脱落、ケガによる脱落は2名)男性10名女性29名

年齢20 ± 3歳

過去2年の間週1回以上の筋力トレーニング・パワー系トレーニングの経験あり。

トレーニングプログラム:

1.Olympic style weightlifting(=OWL)13名(女性4名、男性9名)

クリーンやスナッチ、ジャーク、クリーン&フロントスクワットを行う。※ハイキャッチかロウキャッチかの記載はない

2.Motorized strength and power training(=MSPT)13名(女性3名、男性10名)

特別なスミスマシン( robotic engine training deviceというものを付けコンピュータ制御する)を使って等速性のスクワット系トレーニング(エキセントリック局面は等張性)を行う。ジャンプ系エクササイズは等張性で、エキセントリック局面において負荷が増加された。

3.Free weight strength and power training(=FSPT)13名(女性3名、男性10名)

フリーウエイトでMSPTと同じ内容を行う。

以上の各トレーニングプログラムを8週間(第3週目までは週2回、それ以降週3回)のトレーニングによりSJ, CMJおよびDJ跳躍高、30mスプリント(5m間隔で測定)、CMJ(+負荷)中のパワー発揮、スクワット1RM(スミスマシン)、体組成(DEXA)および筋厚と構造(羽状角)の変化を測定した。

※総負荷量は同じ

※介入後の変化量は 僅か(=trivial)、小さい(=small)、中程度(=moderate)、大きい(=large)で表された。

結果:

OWLは荷重CMJ(=small)以外は僅かな改善(=trivial)しか見られなかった(変化はあった)。トレーニング時の使用重量からハングクリーンの推定1RM は向上していると考えられた。

MSPTはテスト種目において全て小さな改善(=smallもしくはmod)が見られた。体組成は僅かな改善(=trivial)しか見られなかったが大腿直筋と外側広筋の筋厚と羽状角に小さな増加(=small)が見られた。

FSPTはスクワット1RM と跳躍高に小さな改善(=small)がみられた。スプリントタイムには改善が見られなかった(わずかに低下)。体組成にははっきりとした変化は見られなかったものの大腿直筋と外側広筋の筋厚・筋長、羽状角には小さな増加が見られた(=trivial~small)。

Helland et al.Training Strategies to Improve Muscle Power Is Olympic-style Weightlifting Relevant? Medicine & Science in Sports & Exercise,April2017,Volume49,issue4,p736-745.


どうやらウエイトリフティング種目だけでは他のトレーニング様式と比べてパフォーマンスに好影響を与えるとは言いにくそうです。

もちろん筆者らが述べているように

リフティングテクニックの不足(下半身より両腕の筋量増加が見られたため)により下肢の力発揮が十分でなかった可能性や、介入期間に行った種目違い(OWL以外はテスト種目に似たトレーニングが行われた)などOWLの評価にフェアでない条件であったと思います。

ですが一般的ある「跳躍高やスプリントにはウエイトリフティング種目が良い!」

といった他のレジスタンストレーニングよりも身体パフォーマンスに好影響を与えそうなイメージを変えてくれる、良い内容だと思います。

身体にはいくつもの体力要素があり、それらが相互作用を起こして良いパフォーマンスが生じます。

何か一つの要素のみをトレーニングしても大きな変化は得られないでしょう。

トレーニングは包括的に行うことが重要と考えましょう。

※1.Hackett,D,Davis,T,Soomro,and Halak,M.Olympic weightlifting training improves vertical jump height in sportspeople : a systematic review with meta-analysis. British Journal of Sports Medicine 2016.過去ブログでまとめています。