
サッカーの女子選手が5週間トレーニングとしてスクワットを行い、1RMは向上した(=最大筋力の向上)がスプリントタイムとジャンプ高は変わらなかった、という研究論文をご紹介します。
2つのサッカーチーム(ノルウェーの国内リーグと地域リーグに所属するチーム)を対象に、片方のチームのみスクワット(およびノルディックハム)を行わせて身体能力に違いが出るかを測定した。
トレーニング群(TG)への介入・・・
チームで行う練習とは別にバックスクワットとノルディックハムを行った。
週2回トータル10セッションで前半3セッションは3セット6レップス、後半7セッションは4セット4レップスを行った。強度は介入前に測定したスクワット1RMの85%の重さで行い、レップを完遂したら重量は増やしていった。※ハムストリングスの肉離れ予防にノルディックハムも各セッション毎に行った。
コントロール群(CG)は通常の練習のみ行った。
両群ともサッカーの練習時間に大きな差はなかった。
結果として・・・
スクワットの1RMはTGで顕著に増加した。
TGvsCG(平均±標準偏差)
介入前106±21kg vs 118±28kg
介入後137±16kg vs 124±31kg
介入前と比べてTGで31%の向上、CGで5%の向上だった。
一方、スプリントタイムとジャンプ高には両群とも変化が見られなかった。
TG(介入前→介入後)※CMJ=カウンタームーブメントジャンプ
・5mスプリント(秒)
1.06±0.05→1.5±0.05
・10mスプリント(秒)
1.89±0.07→1.89±0.08
・15mスプリント(秒)
2.66±0.01→2.64±0.12
・CMJ(cm)
27.32 ± 4.94→27.19 ± 5.93
CG(介入前→介入後)
・5mスプリント(秒)
1.06 ± 0.06 →1.07 ± 0.06
・10mスプリント(秒)
1.90 ± 0.09 →1.90 ± 0.09
・15mスプリント(秒)
2.67 ± 0.13 → 2.66 ± 0.13
・CMJ(cm)
25.82 ± 5.45 →26.12 ± 4.83
Pedersen, Sigurd et al. “Improved maximal strength is not associated with improvements in sprint time or jump height in high-level female football players: a clusterrendomized controlled trial.” BMC sports science, medicine & rehabilitation vol. 11 20. 17 Sep. 2019, doi:10.1186/s13102-019-0133-9
いかがでしょうか?
一般的にスクワット強くなる→競技能力が向上する
というイメージがありますが、この研究では1RMの向上(最大筋力の向上)は
サッカーの競技能力と関係するであろうスプリントタイムやジャンプ高には影響を与えませんでした。
筆者らは介入期間が短かったことや、スプリントトレーニングおよびジャンプトレーニング不足を原因に挙げています。
ここが今日のタイトルとつながる点で
筋力トレーニングの一番の効果は筋力トレーニングが強くなることです。
足を速くする、ジャンプを高くするには「走ること」「ジャンプすること」を普段のトレーニングで行わなければなりません。
実際の運動に繋がることをしなければ求める能力は伸ばせません。
特異性の原理です。
もちろんスクワットを伸ばす=最大筋力を向上させることが意味のない訳ではありません。
スプリントトレーニングと並行してスクワットをおこなえば結果は違っていたでしょうし、筆者らの述べているようにケガのリスクを下げるといった別の点からサッカーのパフォーマンスを向上させるのに貢献する可能性は大いにあります。
また、今回の結果は筋力トレーニングをしても競技パフォーマンスに悪影響を与えず筋力が向上出来ているという見方もできます。
ですが、
1RMを伸ばすことがパフォーマンス向上に繋がる!
と短絡的に考えないようにしたいですね。